category_chara_img_103

https://pad.gungho.jp/member/story/index.html
100:番組の途中ですがオーガch.がお届けします 005年01月01日 19:19 ID:ogrech.
6号の前に現れたイデアルが防御壁を張り、レイゲンの攻撃を阻む。
周囲が動揺を見せる中、遅れてエンラが到着した。
「あの子は……やはり出会ってしもうたか」
「エンラ! これは一体どうなっているんだ……まさか、記憶の封印が解けたのか!?」
「いや……」
状況が分からずニースが狼狽する中、エンラは難しい顔のままじっと弟子を見つめる。
イデアルが生み出し、守ろうとした少年。その願いは叶わず、少年は不完全な龍契士となり彼女も心を壊した。その辛く悲しい記憶はエンラによって封じられているはずだった。
その封印が解けかかっているということなのか。
エンラが思案する中、イデアルは6号に攻撃を仕掛けたレイゲンの主へ杖の先を向ける。
「彼は我ら直属部隊の標的です。他者の介入は許されません」
「……ほう」
ディステルはわずかに考えるようなそぶりを見せた後、レイゲンを己の胸元へと戻す。
「介入を許さないというのならば、貴様がその者の後始末をするが良い」
「グア……ァ……アグァ……ッ」
「……!? これ、は……」
彼の言葉と同時に、イデアルの背後で苦痛の声が上がる。
体内から止めどなく溢れる龍の力に耐えられず暴れる6号が、目の前にいるイデアルへ龍腕を振り上げた。
「我々への攻撃意志を確認。対象を、排除……」
攻撃を避けながら杖をかざし、魔術を発動させようとする。
しかし彼女は完成前に構築していた術式を破棄し、6号の攻撃を避け続けた。
「何故……どうして私は……」
迫りくる龍腕や炎を避けながら、イデアルは困惑の表情を浮かべる。
何故彼への攻撃を躊躇っているのか、自分でもわからない。
目の前で苦しむ子どもに胸が張り裂けそうなほどの痛みを覚える。
これ以上彼を傷付けたくないという気持ちが溢れてくる。
こんな感情を、自分は知らない。
(知らない……はずなのに……)
「苦シイ……苦シイ……助ケテ……ッ」
『力が……抑えられな……すまな……アル、トゥラ……イデ……アル……』
6号の悲鳴の中に契約龍ヴァンドの声が混じる。
苦痛と悲しみに染まった言葉は、イデアルの心を大きく揺さぶった。
(昔……同じような気持ちを抱いた気がする)
心の中で、奥底に封じていた何かが音を立てる。
「私は……っ--!?」
自身の感情に気を取られていた直後。
6号の龍腕が、彼女を捕えた。

category_chara_img_104

防御が間に合わず、受け身も取れないままイデアルは地面に叩きつけられる。
体中に痛みが走る中、彼女は自分を排除してもなお力のままに暴れる6号を見つめた。
苦しみから逃げ惑うように暴れ、無差別に周囲を攻撃し、破壊し、業火で焼き尽くしていく中。その中心にいた6号が、誰にも聞こえないような小さな声を発した。
「痛イ……苦シイ…………ウサン……オ……母……サン……」
何も考えられないまま、ただ彼を見つめていたイデアルの頬に一滴の涙が流れる。
どうして涙が流れているのか、何故彼を見ているだけでこんなにも胸が苦しいのか。
記憶のない彼女には何一つわからない。
「私……私……は……」
しかしただ一つだけ、彼女の心に言葉が浮かんだ時。

「アァアアアアアッ!!!!」

6号の攻撃対象が、静観していたレーヴェンへと向けられた。
いびつな翼を広げ、悲鳴と共に目の前の敵へと龍腕を振り上げる。
……しかし。
「……邪魔だ」
感情の籠らない声が発せられたのと同時に、6号はレーヴェンに指一本触れることなく弾き飛ばされた。
「ウゥ……グ……アァ……」
「龍の力に呑まれ、生けるものに牙をむく獣と化したか」
地に伏しながらも6号は再びレーヴェンを攻撃しようと龍腕を動かす。
ディステルの憐れむような言葉も耳に届いていない。
レーヴェンはゆっくりと手をかざし、彼に向けて黒雷を振り注いだ。
「ガァアアアッ!?」
禍々しい雷が6号の体を貫き、地に縫い留める。
「どうして……彼はお前達の仲間だろう!?」
「すでに帰還は果たした。彼の者はすでに不要だ。余計なことをする前に退場させるまで」
ティフォンの問いに淡々と返答し、レーヴェンは再び強力な黒雷を生み出した。

「ウゥ……」
もう苦しむだけの体力もないのか、6号は伏したまま目を閉じている。
――身体中が熱い。痛い。苦しい。悲しい。
こんな事が、前にもあったような気がした。
痛くて、辛くて、怖くて。
(ドウシテ……怖カッタ? 何デ……)
無いはずの記憶を追いかける。
『……ル……アル……また私は……お前ヲ……守レナ……』
6号の心にヴァンドの声が響いた。
守る。そう、自分も何かを守りたかった。
自分にはできないかもしれないけれど、それでも守ろうとした。大切な、何かを。
(……何、ヲ?)

「……滅べ」
わずかに残った力で身体を起こす中、レーヴェンが6号に向けて黒雷を放った。
虚ろな瞳が、己に襲い掛かる黒雷の光を映し出した瞬間。

「……今度こそ私が、貴方を守ってみせる」

6号を庇うようにして前に飛び出したイデアルの身体が、黒雷に貫かれた。